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教授からのメッセージ(H21)

by yoshimura1212 last modified 2009-01-04 13:21

このHPを訪ねてきてくれたあなたに

 はじめまして。私は慶應義塾大学医学部微生物学免疫学教室の吉村です。平成13年1月に久留米大学分子生命科学研究所、遺伝情報研究部門から九州大学生体防御医学研究所に転任し、さらに平成20年より慶応大学医学部微生物学免疫学教室に異動しました。H21年には移動完了の予定です。昆虫が脱皮するたびに大きくなるように私たちのラボも移転の度に成長しました。九州大学での7年は本当に実り多いものでした。大学院生もMDが20名以上、PhDも10名近くが巣だっていきました。彼らの一人一人が私の誇りです。慶應大学でもH20年度大学院生が3名参加してくれてさらにH21年度も大学院生1名とポスドク4名が参加の予定です。スタッフも増えました。今年度には教室の体制が整うことでしょう。

私は若い人達が成長し、かつ私自身も刺激をうけ成長できるようなラボをつくりたいと常々思っています。私は自分のために仕事をしているという意識はありません。学生を自分のために働く労働力と思ったこともありません。科学は創造の学問です。学生と私で新しいものを生み出し世に問うていくことが私の仕事です。その過程で学生は成長していく。私のラボの第一の使命はMD,PhDを問わず、医学生物学分野の研究者を育てることです。吉村-3

私は京都大学理学部生物物理学教室を1985年に出て、大分、鹿児島、アメリカMIT、そしてまた鹿児島と点々としましたが1995年夏より久留米大学分子生命科学研究所にラボを構えました。着任当初はわずか3名であったラボも5年後には総勢十数名となりスペース不足が深刻化してきました。そこで新たな飛躍を期して平成13年1月より九州大学に移転しました。この間の経緯は駆け抜けた5年半(前編)、駆け抜けた5年半(後編)に記しています。
私は1989年のアメリカ留学以来サイトカイン受容体の情報伝達機構の解明にかかわる研究を続けています。もともとは生体膜の物理化学が専門の研究室で勉強をはじめたのですが、遺伝子を扱えなければ生物現象の本質には迫れないと痛感し、独学で遺伝子の勉強をしました。アメリカ留学中にエリスロポエチン受容体の研究をはじめたのですが幸いにも小さいながらこの分野の進歩に貢献でき、おかげで若輩ながら自分の研究室を持つことができたと思っています。もちろんそれは多く幸運とすばらしい人々との出会いと援助なくしては生まれてこなかったと思います。この間の経緯は ボストン留学の思いで 、DNAX研修の思い出 、研究者をめざす若い人へに記しております。ぜひご覧になってください。そのうち九大での思い出もまとめたいと思います。

  当教室では細胞の増殖、分化、死のメカニズムを分子レベルで明かにし、あわせてその成果をもって医学、医療に貢献することを最大の目標としています。具体的にはエリスロポエチンをはじめとする細胞の増殖分化誘導因子(サイトカイン)の受容体から核へ至る情報伝達経路とその制御機構の解明、細胞周期との関連、さらに新しい情報伝達分子のクローニングと機能解析を行っています( サイトカインのシグナル伝達機構)。また我々が発見した遺伝子がどのような病態と関連するのかを様々な疾患で調べています。さらにこれらの遺伝子の個体レベルでの解析を行えるようにトランスジェニックマウスやノックアウトマウスの作成も行なっています。詳しい研究内容については”最近の研究成果のまとめ”を見てください。

 アメリカに留学中”実験の3原則”というのを教わりました。これを守れば普通のひとでも最低必ず普通の研究者にはなれます(プラス独創性があれば一流になれるかも)。”実験の3原則”とはアメリカにいる有名な日本人研究者の言葉です。 私はいつもこの言葉を思い出しながら実験してきましたが、本当に守ることはなかなか困難です。最近ではこれに"Hard Work”を加えて実験の4原則としています。

実験の4原則とは
i) positive control
ii) negative control
iii) experimental value
iv) hard working

最近はサイトカインシグナルの調節機構の解明からすすんで免疫学に研究の中心を移しています。学生時代私は免疫学の講義がさっぱり理解できず、免疫学は難解なもの、自分とは縁遠いものと思ってきました。20年後に自分が免疫学の教授になるとは想像だにしませんでした。しかし少しずつ免疫学の面白さがわかってきました。論理構成の難しさはありますがしょせん高等数学の難しさには及びません。難解な用語や多彩な技術がありますがすぐ慣れます。あなたも免疫学が苦手?大丈夫、私が理解できる程度のことは誰でも理解できます。またアトピーやアレルギーなど、実は免疫学は身近な疾患との関係がきわめて深いのです。

今後も免疫、造血、癌を中心に”シグナル伝達とその制御”を切り口に研究を進めていきます。その際の基本的な目標は次の4つです。
 (1)CIS/SOCSファミリーとSpred/Sproutyを中心としたサイトカインシグナルの制御とその分子機構、生理機能の解明。

 (2)新しいシグナル制御分子、制御機構の発見
 (3)シグナル制御の破綻と病態との関連の解明。シグナル制御を応用した癌や炎症性疾患の新しい治療法の開発。
 (4)バーチャルに免疫応答を再現する(e)mmunologyとも言うべき新しい学問分野の創出。

特に一昨年採択された保健医療分野に置ける基礎研究推進事業 、昨年採択されたCRESTの研究課題である”SOCSやJAK阻害による免疫疾患治療法の開発”と”免疫リプログラミング”の研究を推進します。みんさんも私といっしょに新しい世界にチャレンジしてみませんか?研究の面白さと苦労を分かち合いましょう!

東京の私立大学では学費や生活費が高くて大変だと思う人も多いと思いますが本当に大切なのは気持ち、意気込みです。現在は慶應大学医学部では、奨学金やglobalCOEからのRAのサポートで真面目にやっていれば学費はほとんどかからない制度になっています。もしあなたが博士課程に進学したいと希望する、もしくはすでに進学したのなら、自然の摂理を極めるという強い意志か、不治の病の治療法を見つけたいと言う純粋な気持ちか、30台後半には教授(もしくはPI)になるんだという強い気持ちが必要です。これらがあれば必ず道は開ける。そんな若者を世の中は放ってはおきません。安心して学業に励んだらよいと思います。

ただ最低限、必ず科学的なものの見方は身につけなければいけません。それが苦手な人は他のひとよりこの分野(分子生物学や免疫学)には向きません。分野を間違えて普通より苦労する場合もあります。生命科学と言ってもかなり広いのです。また実験科学では実働時間がものを言いますからやはり若い時に集中して実験が出来ない人も向きません。そんなときは私は割とはっきり早めに分野をかえた方が良いと言います。それが本人のためだとよく知っているからです。

 私だって経済的にも生活面でも大変なことであると感じています。それを敢えて挑戦しようとしています。決して後ろは振り返らない。ちょっとは愚痴るかもしれないが原則過去はふりかえらない。それが私のモットーです。

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