科学で必要なものは、、?
最近柳田充弘先生のブログを訪問していなかった。今ちょっと覗いたら面白いことが書いてあった。まず先生の京都大学本部についての怒り。これについては私も同様の感想を持っているのでぼやきのほうで書こう。この頃ぼやきと人生案内が区別がつきにくい。自分の中では割と建前的な話や学生向けの話は人生案内に、愚痴としか思えないようなものや怒りはぼやきのコーナーに入れたい。だがその区別はなかなか難しい。このHPはブログではなく以前書いたものも加筆訂正を常に行なっている。思いつきもあるが最終的にはある程度まとまった論考になるようにしたい。
さて柳田先生の一節を引用しよう(勝手にしていいのか?)http://mitsuhiro.exblog.jp/
“意欲とはいったい何なのだろうか、とおもいます。わたくしにとって人生最大の謎の一つです。岡本太郎氏は「芸術は爆発だ!」というセリフで一般の人々の間に強い記憶が残っています。わたくしは、「科学は爆発だ!」とは火山学者でないのでいえませんが、「科学は好奇心だ!」というくらいの陳腐なセリフはいえそうです。「科学は意欲だ!」と言ったほうがいいのかもしれません。それとも「科学はわたくししか知らないことだ!」とでも言ったほうが、科学の真骨頂を伝えるのにいいのかもしれません。”
私は常々“科学は想像力”だと言っています。創造ではありません。創造とは結果だからです。チャップリンは“人生で必要なものは、勇気と想像力と、ほんの少しのお金”(ライムライト)と言っていますが、私はこれを真似て“科学で必要なものは、勇気と想像力と、ほんの少しの研究費”と言っています。研究費については別に書いています(研究費をめぐる雑感)。若くてこれから科学に挑戦しようという人たちに高額な研究費は有害です。キュリー夫人のラジウムの発見は自前の掘建て小屋で行なわれたしインスリンの発見はバンチングが余った犬をもらい受けて行なったものでした。とても億単位の研究費は想像できない。しかしもし彼らにそんなものをあげたら逆に発見には結びつかなかったかもしれません(もちろん大型の加速器や望遠鏡を必要とする巨大科学の話ではありません。私の話は常に医学生物学の話です)。
勇気は絶対的に重要です。今まで未解明のことに挑戦するのですから。ことに多くのひとが挑んでうまく行っていないことに挑戦する場合は新しいアイデアを実行に移す勇気が必要です。幸い我々の世界での思いつきを試すのに必要な研究費はたいしたことはありません。
ではそのアイデアを生み出す原動力は何か?それこそが想像力だと思います。イマジネーションです。科学で成功しているひとは例外なく想像力豊かなひとです。ここからはかなり論証的な考察が必要でいつか時間ができたときに論文にすべきことのように思うのですが、今はぼんやりなんとなくこうではないか、と考えている段階です。
ノーベル賞の対象になった画期的なアイデアというのをいくつかみていると、アイデアというのは決して無から生まれるのではなく、複数の一見関連がなさそうな事象が組み合わさって生まれることが多い、ということに気がつきます。例えばインスリンの発見では(1)膵臓をしばると血糖値が上がるので血糖値を下げる何らかの物質が膵臓からでている、ということはわかっていました。当時の人々はこれを純化しようとして全くうまくいってなかった。ところがバンチングは(2)膵臓からはかなりの蛋白質分解酵素が分泌される(消化器なのだから当然)、という論文をみてもしかしたら血糖値を下げる物質は分解酵素で壊されるのではないかと考えた。さらに(3)膵臓を長期間縛ると分解酵素が出なくなる、という論文をみつけて、では長期間縛った膵臓をソースにすれば血糖値を下げる物質を純化できるだろう、と考えた。考え方の手順は全く理屈通りで誰にでも思いつきそうなことです。しかし(1)のことばかり考えている生理学者には(2)(3)の生化学の知識がなく思い至らなかった。つまり問題を解くヒントは問題の領域とは別のところにある、ということがよくある。ふたつの異なった知識を結びつけられるのは(もちろん知識があることは当然必要ですが)豊かな想像力ということになる。平たく言えば、私のいう想像力とは論理を越えて2つ以上の複数の事象を直感的に結びつけて問題解決のアイデアとする能力、ということです。シャーロックホームズの洞察力に近いかもしれません。これはおそらくサイエンスに限ったことではないと思います。だから人生に想像力が必要なのでしょう。もちろんアイデアを実行に移す勇気も讃えられるべきでしょう。
話はかわりますが、一般的に男のほうが科学に向いていると言われていますがそれはなぜでしょうか?ひとつはアイデアを実行に移す勇気が男性のほうには多いのかもしれない。また移せる環境にいるのが男性のほうが多いというのもあるでしょう。しかし密かに私は女性のほうが潜在的な想像力(直感と言うべきかもしれない)はずっとすぐれているかもしれないと思っています。それが一番よく現れるのは浮気を見破る推理力のようでこれについては様々なひとが多くを書いているので繰り返しません(http://www.zenteikyou.com/column-top.htmlなど)。男では想像だにできない、ささいな変化から大胆な仮説を経て真相に迫る。どうです?まさにサイエンスにおける新発見のプロセスそのものでは?