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研修をしてから大学院に行こう

by yoshimura1212 last modified 2007-05-03 14:47

研究をしてみたいという医学部学生へアドバイス(加筆予定)

MDは研修をしてから大学院に行こう

今年(H19年)は基礎配属に市村研三君が来てくれた。今風のさわやかなナイスガイであるが、ものすごく熱心で夜遅くまで実験している。思った通りの結果が出て面白くてしかたない様子だ。5月から沖縄で病院研修をする予定にしているので5/2に送別会をした。もっと長く実験したいという。いずれは大学院で本格的に研究をしてみたい、と目を輝かせて言ってくれた。まだそんな若者がいてくれるのは本当にうれしい限りだ。
 彼に限らず、メールなどで、卒業後すぐに大学院に進学したほうがよいか、それとも研修を終えてから進学したほうがよいか尋ねられることが多い。
私は迷わず
研修を経験してから進学するように
と答える。

もちろんそのまま進学するひともいてよいが、そこまで基礎研究のみやりたいというひとは相談には来ない。迷うのは医師としても研鑽を積みたいが医学研究もしてみたいという両方の希望をもっている若者たちなのだ。

理由はいくつかある。
患者を実際にみて治療できるのはMDだけである。その機会を放棄するのはあまりにももったいない。もともと医師になりたくて医学部に入ったのだろう?研修によって現在の医学の限界や問題を認識できる。助からない患者を救うために研究をしたいという意欲も湧くだろう。自分の能力を何に使うのが最も人々のためになるのかを考える時間も持てるだろう。患者をみたことで例えば自分が行なう実験の意義もより深く認識できる。自分が指導者になったときに研修の経験は必ず生かされるだろう。事実医学部基礎の教授のほとんどは研修を経験している。それが無駄だったというひとは少ない。

医学部出身の研究者を育てなければいけないという議論が現在さかんに行なわれている。一部には卒後研修をせずに進学する者に高額の奨学金を与えて優遇しようという意見もある。早い話がこのままでは医学部基礎の教授は全員非医学部出身者になってしまうという危機感があるらしい。医学部で系統的な人体医学を学んだ医学徒でなければ将来の医学を支えられない(つまりまともな医学教育ができない)という意見があるが、私に言わせればとんでもなく間違った認識である。生化学や免疫学を教えるのに人体教育はなくても本人の努力でなんとかなる。事実PhD出身の立派な医学部生化学の教授が多数のMDの教授を輩出している例は多い。細菌学や免疫学の祖ともいえるパスツールは化学者である。人体を理解している医師を研究者にという意見ならばむしろ積極的に研修をさせてから進学させるよう指導するほうがよほど理にかなっている。逆に研修を経験せずにそのまま進学し基礎医学の教授なったかたは純粋基礎生物学に集中して治療や応用と言った言葉すら嫌うかたもおられる(それがいけないとは思わないが)。卒業後すぐに進学をするべきである、という意見にはむしろ学生を労働力としかみない意識が見え隠れする。また医学部出身者のみを優遇しようという発想には医学部出身者(入学者?)は優秀であるという選民意識もかいま見える。
 もちろん研修でよい給料をもらっていた人たちが意識をかえて、無給どころか授業料を払わなければいけない大学院生になるのか、という意見はもっともだと思う。私も少しでも多くの医学部出身者に研究を経験してもらいたいという気持ちにかわりはない。なんらかの手を打たなければこのままではMDで大学院に進学する者は減り続けるだろう。いやPhDですら博士課程への進学は減ってきているという。したがって欧米のように大学院での授業料免除やある程度の生活費の援助はあってしかるべきだと思う。しかし研修をしたらそのような制度の恩恵にあずかれないというのはおかしいし、MDだけではなくPhDにも同等のチャンスを与えるべきである。医学部独自の制度を言うならばむしろ研修をした者を優先的に援助すべきではなかろうか。

 しかし現実にはそのような制度は今はない。COE等でいくらかの援助を行なう程度である。財源が乏しいので九州大学ではMDにはリサーチアシスタント(RA)経費のような援助はない。アルバイトで稼げるだろうというのが理由である。それもたてまえの理念から大きくかけ離れたことだが現実にはない袖は振れないのでしかたない。当面は大学院生の学びたい、という気持ちに依存するしかない。
 だからこそ、研究をしたいという純粋な気持ちをもった若者に期待を削がないようないい指導をしなければならないと思う。むしろ学生側ではなく教官の側が試されているといっていいかもしれない。


ではMDを研究の現場にもっと送り込むにはどうしたらよいだろうか?

研修を終えてから進学では歳をとりすぎていないか?

そもそも何のために大学院進学が推奨されるのか?

それらについてはおいおい加筆していきたい。