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院生へのメール07.05.07

by yoshimura1212 last modified 2007-05-13 10:35

院生にあてた説教メールなど

学振申請書を提出したD1たちへ。

私は君たちを常にencourageしたい。決してdiscourageするつもりはない。
しかし危機感を持ってもらうことは重要だと思う。また今の君たちに足りないことを自覚して努力してもらうことも重要だと思う。君たちに向けて学振申請書の書き方、を書いたのだ。よく読んで意味を汲み取ってほしい。努力すればよくなる。考え方も科学者らしくなる。博士課程はそのためのトレーニング期間なのだ。ただトレーニングをうけているという自覚が必要だと思う。

君たちの申請書をみていると、考えたかたがまだまだ足りない様に思う。相当頑張らないと博士課程に進んだ意味がなくなると危惧する。君たちは科学者になるために進学したのであって技官になるためではないはずだ。
4年後は自分でテーマを考え、実験方法を考え、途中で修正しながら結論を導き、かつ論文をかけるだろうか?それを指導者なしでやれるだろうか?これから4年でそれを目指すことになるのだ。どのくらい努力しなければならないか想像がつくだろう。しかし博士課程に進むとはそういうことだ。それは他所のラボにいっても同じことだと思う。もちろん指導者の善し悪しやテーマの善し悪しはあるかもしれないが。

4年後”自分でテーマを考え、実験方法を考え、途中で修正しながら結論を導き、かつ論文をかける”ことが、ある程度できそうならば(あるいは数年後にはできそうなら)卒業後すぐに助手に推薦もできる。具体的に言えばS君ぐらいになれば私は自信をもって推薦でき、実際にそうなった。しかし残念ながら先輩たちがすべてそういうレベルに達したわけではなかった。
最近無理に4年で卒業はさせないほうがよいのではないかと思うようになった。もしアカデミックを含めてちゃんとしたところに就職しようと思えばよい論文が必要だ。まだ”自分でテーマを考え、実験方法を考え、途中で修正しながら結論を導き、かつ論文をかける”状態にほど遠いのにlow-rankの雑誌で学位をとっても残念ながらアカデミックポジションは難しい。やはり助手クラスとなると上の条件を満たさないと推薦はできないし良い論文を持っていなければ研究費もとれない。無理に推薦したこちらが恨まれることになる。時間はかかってもそのレベルに達せるようにトレーニングを積み、よい論文を出したほうが結局は希望がかなうことになるだろう。

萎縮する必要はない。まだはじまったばかりだ。今から頑張れば4年でそのレベルに達することはできる。いつも口を酸っぱくして論理的に考えることや、素早く考えをまとめることや質問すること、答えること、次の実験をどう考えるべきかなどは指導してる。それをきちんと自分のものにしてけばよい。ただそれらは自分で身につけていかねばならない。咀嚼して消化して自分のものにしないといけない。誰も授けることはできない。つまり受け身ではいけない。すべてがトレーニングだと思って真剣に取り組めばよい。

今回の申請書書きはよいトレーニングだと思う。来年また書くことになれば格段によくなるだろう(D2の子の文をみていると実にそう思う)。もちろん書かなくてすめばそれにこしたことはないが。

雨の金鱗湖05年湯布院

*****

君に足りないのは論理的なものの考え方だ。筋道立てて理屈に合うように考えていく。思い込みや勝手な想像はサイエンスからはずれている。何のためにやったのがちゃんと説明できない実験は時間の無駄で、いくらやってもまとまらない。もちろん君に言い分があることはわかる。しかしその言い分がいかに説得力がないかよく考えてみるべきだ。

科学者にとっては論理的なものの考えたかは当然の血肉のようなもの。それができないとなると相当苦しい。
私が言っていることをよくよく真摯に受け止めて自分で自分を変えていくように努力するしかない。それができなかったときは、、、まあその時はその時だ。

例えばコンタミして実験が失敗したとしよう。その時にすぐ言い訳したくなる。自分の技術やうっかりミスは棚にあげたくなる。そうではなくどこが悪かったのか、間違ったのか、考え続けることだ。それを何かの間違いだろうですませるときっとまた同じことをくりかえす。言い訳するのではなく、まずどうしてそうなったかを考え、そのうえでどうしたらなおせるか考えてみるべきだ。そういうことをくりかえせば科学的な態度が身に付いていくと私は思う。日々の実験も同じ。ある結果から論理的に考えて結論をだし、さらにそれを検証する実験を組む。我々の仕事はそれのくり返しだ。だからきちんと筋道立てて考えていくことは特に重要なことなのだ。

もうひとつの重要なポイントはその実験の価値だ。理屈のうえでは正しい。しかし何の価値もない、ということがある。例えば本来は樹状細胞からのサイトカインの産生制御機構を調べているとしよう。実験結果が振れるのは、自分は刺激の種類よりも培地の構成成分に問題があるのではと考えて延々と血清を変えたり培地やシャーレをかえたりと検討したとしよう。それはそれで間違っていない。必要な場合もある。しかし膨大な時間と労力をかけて一番よい血清を見つけたとしてそれで本質的なことがわかったと言えるだろうか?それでどれほど前進したことになるか?論理的にものごとを考えるだけでは足りないこともある。本質的に重要なことにまず取り組む。4原則のなかのexperimental value である。研究の意義、実験の価値を考えて取捨選択できることも科学者にとって必要な基本的能力である。